『ぬるい炭酸と無口な君』
窓の外で蝉が鳴いている。今は午後3時18分。
1番暑い時間帯真っ最中だ。
ソファでくつろぐ彼女の横に勢いよく腰かけ
炭酸の蓋を開ける。
「あー、ダメだ。ぬるいぬるい。」
買ったばかりの炭酸は熱にやられ
気が抜けてしまっている。甘ったるい。
「クソッ。せっかく2人っきりなのにさぁ、こんなに暑いとやんなっちゃうよね。良い場所だと思ったんだけどなぁ。クーラーはつかない。冷蔵庫も使えない。床は散らかってるしトイレは臭い。あと蝉がうるさい。まぁガキが来ないのが救いか。あーあ。これからどうしよう。」
炭酸を勢いよく飲み干し、彼女に覆い被さる。
「ねぇ聞いてるー?私、貴方のせいで
こうなってるんですけど。」
彼女の返事は無いし、目も合わせようとしてくれない。
彼女の髪を撫で、輪郭をなぞり、唇に指を当てる。が、反応はない。そんな彼女を見ていると腹が疼いて溜息が出る。体を支える腕の力をゆっくりと抜いていき、彼女と溶け合うよう体重をかける。反応はない。
「、、、どうしてこうなっちゃったんだろうね。
私、貴方と一緒に居たかっただけなのに。」
蝉の鳴き声、炭酸の甘ったるい香り。
そして、無口な彼女だけがそこに居た。
8/3/2025, 4:52:17 PM