ミミッキュ

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"列車に乗って"

 脱衣所で濡れた髪を拭きながら、スマホの画面をスワイプさせてニュース記事を確認していく。
「また廃線のニュースかよ……」
 近年何度か目にするようになった《廃線》という文字に辟易の声を上げる。
──いつか、あの路線も無くなるのかな……。
 ふと、《あの町》の事を思い出す。
 医師免許を剥奪され、病院を飛び出した後に何かに誘われるように辿り着いた《あの町》。
 何も無い簡素な田舎町だったが《あの町》での出来事のおかげで、俺のやりたい事が《この町でしかできない事》だと気付けた──具体的に『何がやりたいのか』までは分からないままだったから三年程自堕落に過ごしていた──。
 この町に戻った後の五年間は、とてもじゃないが《あいつら》には言えない。
 当時高校生だった《あいつら》は、今は立派な大学生か社会人か。
「今度の休みに行くか」
──ハナを連れての、日帰り旅行。誰か一人にでも会えるといいな。
 スマホを置いてバスタオルを洗濯カゴに入れる。ドライヤーを手に取って、鼻歌を口ずさみながら温風に髪をなびかせた。

2/29/2024, 1:25:02 PM