「胸に手を当てて考えてみて」
そうして、乱暴に扉を閉めて彼女は出て行ってしまった。今日は記念日で、最近は仕事が忙しかったから一ヶ月ぶりに会う予定だった。私は浮かれて彼女が好きなチョコケーキと苺のタルトを一つずつ買った。甘い物はあまり好きでは無いから、彼女が食べて嬉しい物を選びたかった。普段持たない花束なんかも買って、少しぎこちなく向かった玄関口での出来事だった。
現実味を帯びない様な感覚で、どうしたら良いか分からなかったけれど胸に手を当ててもただ置いて行かれた寂しさだけがそこにあった。
12/21/2023, 2:55:29 PM