高校生の戯言

Open App

私は 教室で一人
友達と呼べる人はいない。

6時間目の授業中
急に雨が降り始めた。
雷が教室に響き渡り

教室は騒然とした。

周りは傘持ってないだの、親に迎えに来てもらうから一緒に帰ろうだの話していた。

私は傘を持ってなかったし、親も仕事でいなかった。

雨宿りをする事にした。

授業が終わり 外を見ると雷が大雨へと変わっていた。

私はみなが帰った、誰もいない教室で一人イヤホンをつけ音楽を聴き雨がおさまるのを待つことにした。

然し雨はどんどんと激しくなり
スマホの大雨警報通知で早く帰った方がよかったと知る。

普段友達がいないから一人スマホとにらめっこで使いこなしていると思っていたが、天気予報を調べる頭がなかった。

自分に呆れる。

雨はこれからも続く。

私は走って帰ろうと決め 5階の教室から急いで下駄箱へと向かった。

傘立てはからで誰もいない。
余っている傘があれば借りて行ってしまおうと頭の隅で考えていたが叶わなかった。

スマホだけは濡れぬように制服のポッケに大切にしまった。

いざ駆け出そうと思った時。

「内永さん?」

私の名を誰かが呼んだ。
声がした方へ振り抜くと

同じクラスの結城さんが傘を持って下駄箱のすのこに立っていた。

「内永さん傘は?」と聞かれて
私は正直に持ってないと答えた。

すると結城さんがカバンの中から折りたたみ傘を取り出して「よければ使って」と差し出してくれた。

私はありがたく使わせてもらうことにした。

「内永さん、これから予定とかある?」

これまでクラスでは仲良しグループを作ったりせずに、一人でいた私。
遊ぶ約束、帰る約束は中学以来していない。
そのため予定を聞かれて少し戸惑ってしまった。
そうすると結城さんは優しく「嫌じゃなければ一緒に帰らない?」と誘ってくれた。

この2人しかいない状況で別々に帰るのも気まづいものだと思い、「嫌じゃないよ。帰ろ」と返した。

家までは電車を使って30分かかる。結城さんも電車を使うだろう。それまでの間誰かと話して帰るのも悪くは無い。然しお互い話したことがなく、会話の内容は天気の話。その天気の話も5ラリー続いたが私が打ち返せずに終わった。

雨の中の無言。

勢いよく振る雨
そして風と雷
道には水溜まりができている。

傘をさしていてもどんどん濡れていく制服。
もしも傘をさす才能というものが存在するのなら私は確実にない人間だと一目でわかるほどの濡れ具合だった。

そんな私に気が付いたのか結城さんは「駅に着いたらタオルで拭かないと風邪ひいちゃうね。」声をかけてくれたが私は「そうだね。」としか返せなかった。

駅に着くと人が溢れかえっていた。

大雨の影響で電車に遅れが出ているようだった。
改札口は並んでいた。


遅延するほどの大雨を2人で歩いてきたことに少し驚いていると結城さんも同じことを思いていたらしく「私たちは大雨になんか負けなかったね」と笑顔を私に見せた。

遅延状況を確認したところ後1時間は動けない状態だと分かり駅構内で唯一席が空いていたカフェへ移動した。

まるまる1時間 話したことない人と一緒にいる。
会話はすぐ私で終わる。他人と会話のラリーなどしばらくしていなかったため分からない。
とりあえず最善を尽くす事にした。

ふと思った。クラスでも影の薄い、暗い私を何故 結城さんは知っていてくれていたのだろう。知っていたとしてもわざわざ呼び止め傘を貸してくれて、一緒に帰ってくれたのだろう。

中学とは違い、変に思われてもプラマイゼロの私にはこの質問をする勇気だけはあった。

すると結城さんは少し恥ずかしげに「ずっとお友達になりたかったの。」と話してくれた。

誰とも話さない一人ということを一匹狼、クール、ミステリアスと思われていたらしく、ずっと気になっていたと。

私は自分はただの陰キャで結城さんが想像しているようなかっこいい感じでは無いと伝えると

「今日一緒に帰ってお茶目な1面もあってもっと興味深いと思ったの!!」
と興奮気味に語った。

結城さんは大人しく、優しく、綺麗なイメージだった。だから楽しそうに話すところを見て意外と元気っ子な所があるんだと、お互い知らない一面を知れるそんな日だった。

話していけばいく程に、イメージとは違うもっと素敵な結城さんがみえた。



電車は動き始めた。
お互いの家は上り方面下り方面で乗る電車が違う為改札まで一緒に歩いた。

別れ際
この間までの私には怖くて出せなかった勇気を出してみた。

「明日、もし晴れたら放課後またお茶しない?」

「もちろん!いいよ!」
結城さんは私の震える勇気を笑顔で受け止めてくれた。


別れを告げて手を振る。
空を見ると
夕日が雨雲の隙間からかおを出していた。
ぺトリコール香る今
明日は晴れるだろう。


②2話

8/2/2023, 9:59:01 AM