詠人

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通り雨に降られた。
私は傘を持っていなかったので通りすがりのコンビニで立ち読みをしていると、ガラスの向こうで学生たちが急いで帰っているよう。
雨が激しくなってきたからか、天井の方からプラスチックを叩くような音が聞こえる。
「天井が薄いのか雨が強いのか」と独り言。恐らくどっちもだろう。
田舎で婆さんが運営してるようなコンビニだから、造りが甘いのだろう。
実は入るのが久しぶりで懐かしのラインナップを眺める。1番驚いたのは子供のころよく食べていたお菓子がまだたくさん売っていたことだ。店主の婆さんもあのころと変わらない。けど白髪と皺はたしかに増えていて、時が如何に経っていたか、ということがわかる。
ところでいくら経っても雨が止まない。おそらく走って帰った方が早いだろうが、ここから駅までにかなりかかるし社会人になって本気で走ってなかったものだから足はきっとなまっている。
コンビニだから傘が売っていると思ったがやはり田舎。そんなもの売っていない。
私は意を決して外に飛び出し、駅へ向かった。


ある夏の話

9/28/2024, 10:07:46 AM