イオリ

Open App

赤い糸

 学生の時から使っている鞄。ところどころ傷みはあるが、まだまだ十分使える。大事な相棒だ。

 朝。ファスナーを開いて準備する。

 万年筆。手帳。ハンカチ。

 水筒。文庫本。

 ナイフ、はいらないな。

 涙、も置いていこう。

 
 鞄を閉じ靴を履いた。

 今度こそ、赤い糸を見つけられるようにと願いながら扉を開く。

 ナイフなんかじゃなく、自分の手でまやかしの糸を切り裂いて。

 大丈夫。自分ならできる。

 涙は置いてきた。もう見間違えることはない。
 
 
  
 
 

6/30/2024, 10:11:18 PM