配送員A

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アルミのブレーキレバーが氷のように冷えきって
そのつめたさがグローブを貫通し指先に突き刺さる
じんじんするなんてもんじゃない
すごく痛いぞ
私は、まだ小さな甥姪どもに言い聞かせる
お前たちは大きくなっても
配送員なんぞになるんじゃないぞ
冬は寒いし
夏は暑いし
膝や腰は痛めるし
送料無料だとか何だとか
稼ぎは安くなるばかりだし
事故だの病気だの怖いものは多いし
つらいことが多い仕事だから
お前たちは大人の言うことをよく聞いて
勉強や運動を頑張って
もっといい仕事に就くんだぞ
子どもたちはこくりと頷いた
私はその素直さに満足して、荷箱を開けた
そして小さな包みを一人一人に手渡す
宛名書きをきちんと確認しながら
じゃあいいか、お前たち
いい子にしろよ
私はまだサンタの手伝いがあるからな
来年もいい子にしてたら
また持ってくるからな
子どもらはプレゼントを開けるのに忙しくて
私の言うことなんか耳に入らない
あからさまに上の空な返事
うん、ありがとう、バイバイ
私は苦笑いして荷箱を閉める
そして次の配達先へ向かう
氷と雪が混じったのが
刃のような風に乗って吹き付ける
暗い夜道をただ一人で

私の十二月二十五日は
ざっとこんなふうだった

12/26/2022, 5:19:29 AM