遠くの空で、雷が鳴った。窓から見えるのはまだ曇り空で、雨は降っていない。降っていれば、もう少し早くこの部屋を出られたのに、と思う。ベッドの上の知り合い──私の彼氏の友達は、大人しい寝息をたてていた。彼氏に勧められた睡眠薬は、だいぶ強力なようだった。「恨みはないけど」キッチンから持ってきたナイフに力を込める。大丈夫。私ならできる。彼氏だってそう言ってくれた。ここに来る前、彼氏が囁いた言葉が私の耳の奥で響く。愛があれば何でもできる?
5/16/2024, 1:39:02 PM