ゴーン、ゴーン…と、大きな振り子時計の音が静かな喫茶店に響いた。合計、5回。午後5時を報せるものだった。書き物をしていた私はふと顔を上げ、窓の外を眺める。ついこの間までは午後5時であろうとまだまだ明るかった筈なのに。今ではもう日が傾き始めていた。
「日が落ちるのが早くなって来たね。」
洗い物を済ませたマスターが、口にした。『そうですね。』なんて返事をしながら、今年も夏が終わっちゃうのか…と、少し寂しく思う気持ちを、残っていた冷めたコーヒーと共に飲み込んだ。
季節の終わりは、寂しいだけじゃない。言い換えればまた新しい季節の始まりだ。
「…今年の秋は、どんな時間が過ごせるのかな。」
言い換えただけで、心にわくわくが広がっていく。
その気持ちを忘れないうちに、私はノートに書き留めた。
『時を告げる』
9/6/2023, 1:44:46 PM