――たぶん、夢を見ていた。
とても温かい場所にいて、辺りには何もない。
がらんと、すべてが白くひらけた場所だった。
地表も白くて何かの跡のような、隆起なのか陥没なのかはっきりしないものがところどころ足もとに現れている不思議な場所だ。
でも美しいと思った。
何もない、白くぼやけた空間なのに、とても美しいと。
その、淡く柔らかな空気が全身を包みこんで温かい。見上げると、空から音もなく何かが降ってきている。
濡れることは無かったが、その雫のようなものが周りに落ちて地面に染み通っていく。時折、地表に薄く浮かぶあの跡のようなものと結びついて、いっそう濃くなる。あの雫は何処からきて、何処へ還るのだろう。そんなことを思いながら地表を眺めていると、視界の端に見慣れた靴が映る。
彼はすぐ近くにいた。顔がすぐそばに。けれど逆光なのか、表情がよく見えない。口元だけがかろうじて見て取れる。
その唇が、ゆっくりと弧を描いた。
意味もわからず胸がキュッと締まって、それから奥深い場所からじわじわと温かいものが染み出してくる。
ああ、笑ってる。笑っている。良かった。
#こんな夢をみた
1/23/2023, 12:33:20 PM