地面から湯気が立ち上ってきそうな、ある夏の日。
太陽の目から逃れようと足速に家路を辿っていた。
ふと、視界の端に黄色が映った。
蝶々だ。
忙しなく羽を動かして低空を飛んでいる。
何の気なしに眺めていると、道路の向こう側から車が近づいてくることに気付いた。
(このままいくと、あの蝶は──)
少し焦って蝶を見る。
気付いていないのか、それとも脅威だと分からないのか、蝶は車の進路上を呑気に飛んでいる。
助けてあげたいが、飛び出す訳にもいかない。
ただ、車と蝶の間で視線を行き来させる。
結局その時は来た。
青空に映える黄色が、宙を舞う。
重さを感じさせない動きで地へ落ちていった。
それは、ひどく儚くて幻を見ていたかのようだった。
あの光景が、いつまでも脳裏に焼き付いている。
5/10/2024, 12:21:36 AM