白糸馨月

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お題『これまでずっと』

 世界に僕の居場所なんてない。家では出来が良い弟のほうが賞賛されて僕はいてもいなくても気づかれない存在、学校ではクラスメイトのストレスのはけ口だ。
 一度だけ親にいじめられていることを伝えたら、「今は大事な時期なの、手を煩わせないでちょうだい」と弟の方を優先された。
 他に逃げる場所なんてなく、僕は家に引きこもるばかりの生活を送っていた。
 そんな生活が変わったのは、ある方法を試したからだ。
 白いメモ用紙に六芒星を書いて「飽きた」と書く、それを枕元において寝る。それだけだ。
 そうすると、目が覚めた瞬間から両親が僕に優しかった。挨拶すれば普通に返してくれ、空気のように扱われなくなった。むしろ、弟の方が空気として扱われるようになっていた。
 おまけに学校へ行けば友達がいて、普通に会話することが出来ていた。そして、僕を日頃からいじめているカースト上位のリーダー格は、いじめられる側にまわっていた。
 だが、それらを目の当たりにしても、不思議なことに罪悪感がわかない。
 これまでずっとたくさんの不遇が重なった人生を生きてきたのだから。

7/12/2024, 4:58:29 PM