宵風になりたい

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高校2年生の夏、彼女が言ったんだ。

___一緒に住むことになったら
カーテン一緒に選ぼうね!___

なんてあどけない声でさ。
気が早い、なんて思わなかった。だってあの時の俺たちは青い春を過ごしていたんだから。
でもどうしてカーテンなの?って彼女に聞いたんだ。
返ってきた答えは俺には良くわからないものだったよ。
彼女はカーテンをお守りだと言った。生活や自分達を守ってくれるお守りだと。だから2人で選んで自分達を守ってくれるようにと、いわゆる願掛けをしたかったらしい。
心の底から可愛いと思ったさ。俺が考えたこともない先の事を、俺がいる前提で話してくれる。
クシャッとした笑顔で、日にあたる黒髪を靡かせながら、透き通った白い肌を俺に寄せて話しかける。
そんな彼女が大好きだったんだ。

でも、彼女はある日突然旅立った。
高校の卒業式前日だったんだ。2人とも同じ大学に行く予定だったんだ。一緒に住もうって、言うはずだったんだ。
漫画とかでよくある死に方だった。見ず知らずの子供を庇って車に轢かれた。彼女らしいやって笑って見送ったよ。

なぁ、今日でお前が居なくなってから10年経つよ。
まだ言えてなかった事言ってもいいかな?今更だって笑われるかな?それでも、言わせて欲しかった。

「一緒に、カーテン選ぼう。」

あぁ、もっと早く言えてたら
      カーテンが君を、守ってくれたのかな。

6/30/2025, 12:23:01 PM