—エール!—
妻に買い出しを頼まれた。最近は仕事でろくに運動していないので、歩いて行くことにした。
「バッチこーい!」
道中で子供の声と、金属のキーンという音が耳に入った。近くの野球場からだと思い、寄り道した。
外野フェンスの外側にある土手は少し高くなっていて、全体を一望できる。そこから観ることにした。
子供用の小さい野球場の中では、赤い帽子と青い帽子のチームで試合をしていた。
スコアボードに目を凝らす。
七回裏が始まろうとしている。少年野球では最終回。青チームが一点差で勝っているので、この回で赤チームが点を取れなければ負けだ。
(負けてるチームを応援したくなるよな)
心の中で「頑張れ」と応援した。
一人目、サードゴロ。二人目、三振。あっという間にツーアウトになってしまった。
三人目は、ショートのエラーで出塁。続く四人目は、レフト前にヒットを打った。
ツーアウト一、二塁。
外野へのヒットが一本出たら、同点に追いつけるかもしれない。
その緊迫した場面に息をのんだ。
ストライク、ボール、ストライク。追い込まれた。
そして四球目……。
金属音が球場に響き渡った。
結果はショートの正面のゴロ。今度は上手くグローブをさばいた。
ゲームセット。
惜しくも赤チームは追いつくことができなかった。
(ナイスゲーム)
逆転劇はなかったが、面白い試合だった。選手達に心の中でエールを送り、球場を後にした。
「あれ、買い出し行ってきてくれた?」
「あ、やべ」
買い出しをすっかり忘れて、家に帰ってきてしまった。
急いで家を飛び出して、車で向かった。
お題:祈りの果て
11/14/2025, 7:41:13 AM