SAKURA・Lemon

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_狭い部屋_

「…は、?」

突然、猛烈な睡魔に襲われそこで意識が途切れた。
目が覚めると、先に視界に入ったのが、真っ黒な壁、壁。
いったいここは何処なんだ?
状況を整理しよう…。まさか、突然の睡魔は計画されてて、俺を眠らせている間、知らない場所に連れてきたんだろうか、それとも、これは何かのTV番組なのか…。

突然の出来事で、焦りと不安で考え込んでいたので周りを見ていなくて分からなかったが、この狭い部屋には数名の人が居た。明らかにサラリーマンな男性。高校生に、中学生ぐらいの子供。若い女性までお年寄りまでいた。
みんな不安そうに、狂ったように焦っている奴もいる。まぁ俺みたいに冷静でいられるのもおかしいけどな。(笑)

すると、さっきまで怪しかったモニターから、なにやらサーカスのような被り物を着た人物が現れた。
「‼︎…お、おいッ!一体どうなっているんだッ…?!」
モニターにいるサーカスのような奴に向かって知らない男性が叫んでいた。
「そ、そうよ!私はなにもやっていない…‼︎気づいたらここにッ…!」
なるほど、やはりここにいる奴らは気を失って気づいたらここに居た〜みたいな感じか。
【ご安心を、私は決して悪いものではありません。皆様は選ばれしものなのです。】
いやいや、どう見ても怪しいものだろ。

「…ど、どう見ても怪しいと思いますよ…?。」
おっ俺の代わりに言ってくれたな。
彼女は高校生ぐらいだろうか。クールで真面目そうな、感じをしていて、比べてサラサラなロング髪だった。

【ははっやはりそうですか。まさにその通りですよ。わたしは怪しいものですよね!でも大丈夫です。!】
意味わからん。なんだこいつ、開き直って笑ってるぞ。
「意味わからん…」
おっと、口に出てしまった。
すると俺の独り言を聞いたのか、さっきの綺麗なロング髪の女子が俺に近づいてきた。
「あの…皆さんも知らないうちにここに…?」
「あぁ、突然の睡魔に襲われてな。」
「やっぱりそうですか…。」
それだけ言って、後はもう口を開かなかった。

【ここでは、皆さんの好きなようにしてください。そう。皆さんのゲームです。】
「は?好きにしろって…真っ黒な壁に狭い部屋だぞ?」
【そうですねぇ!!まぁ、それを考えるのは貴方達自身なんですが】
「ふざけんじゃねぇッ!早くこっから出せ!!」
【そう荒々しくなさずに。では、失礼しました。】
最後にそう言い、モニターがプツンと音を立てて真っ暗になった。
「…ん〜、なにか出られる手口があるかもしれないですねぇ。多分…。」
んー…なにをすれば良いのか…。
すると、またさっきの女子が近づいてきた。
「…なにをすれば良いのでしょうか…?あの方は一体何を企んでいるのでしょう…」
まさに俺が今考えていた事だった。こいつ、なかなかやるな。奥でも女性と男性が話をしていた。
『はぁ…早く帰りたいな…』
『…仕事とかなにされてますか?』
『私は営業マンをしてるよ!貴方は?』
『いいですね、!俺は____』
皆あいつの言ったように好きなようにしているな。
「…その、貴方は学生さん、ですか?」
「んぇ?」
急に話しかけられて変な声がでてしまった。
恥ずかしさで咄嗟に顔を手で覆った。
「す、すまん。」
「…ふふ、面白いですね。」
彼女の初めての笑顔でなんだか心がふわふわとしたきもちになった。…いやこっちからしては何も面白くないんだが。
それから、俺は彼女と時間を忘れて沢山話をした。
お互いの話を沢山教えあったりして、彼女の名前、何処に住んでいるか、趣味はなんなのか、、、この人数ではとても狭い部屋の中で、とにかく沢山話した。

「…あの、もし良かったら…今度お会いしませんか…?私、貴方に会ってみたいです。」
「っ!勿論です。俺もこんなところじゃなくてしっかり貴方とお会いしたいです。」
お互いに会うことを約束したその時だった。数時間前と同じ、突然の睡魔に襲われ、そこで俺の意識が途切れた。

気づいた時にはベットの上に寝転んでいた。ただの夢だったのかもしれない。そう思うと、また眠気が出てきた。
けれど夢の中の彼女の事を思い出すと、何処か寂しさも覚えていた。

謎に包まれた事件から数年が経った。俺は仕事につき、社会人として生きていた。仕事にはラブラブなカップルがいて、『はぁ、早く家に帰りたいよ〜』『早く終わらせて、カフェでも寄りますか』『!やった!』などラブラブカップルの話を盗み聞きしながらパソコンに向かう。そんな毎日だった。そしてあの不思議な出来事は途切れ途切れだが、忘れかけていた。

ある日、仕事で新しく女性が入ってきた。仕事で先輩だった俺はその女性に色々と教える係になった。
その女性は物静かで、綺麗なロング髪で…。
と、妙な既新感を覚えた。この女性何処かで会った気が…。
変なことを思っていると。
「…あ、あの。色々とお世話になります。よろしくお願いします。」
「…っ!」
思い出した。夢の中で不思議な狭い狭い部屋の中で会い、一目惚れしたあの女性に似ているのだ。あの夢のなかの女性と瓜二つだ。
ぐるぐると色々な考えが浮かぶ中をグッとこらえ、
彼女に今までで一番優しい笑顔を向けた。
「こちらこそ。よろしくお願いします。」

それから彼女とは仕事で話していくうちに、趣味や笑いのツボがおかしいぐらいに合い、急激に仲良くなり、月日が経ち、幸せな気持ちで結婚をしたのはまた別の話___。

6/4/2024, 11:41:47 AM