音茶

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お題『神様が舞い降りてきて、こう言った』


俺は今、人生のどん底にいる。
3ヶ月前、社内にいる可愛い女の子に告白をした。
「こんなブスあり得ない」と振られてしまった。
2ヶ月前、仕事で有り得ないくらい酷いミスをした。
オフィスのど真ん中で怒鳴られた。
1ヶ月前、仕事ができないと陰口をたたかれ居場所がなくなった。逃げるように仕事をやめた。
ニートになり、友人どころか家族すらいない。そんな現実に絶望し、自棄糞になって酒を飲んだ。お金も底をつきそうだ。
酔っ払って足取りが怪しくなりそこら辺の道端にすっ転んだ。
「ははっ」
乾いた笑いがでた。今は何をしても楽しい気がする。孤独最高だ。そう思っていると眼の前に影が落ちた。ふと顔を上げると、穏やかなほほえみをたたえたおばちゃんが、俺を見下ろしていた。
「大丈夫ですか?お水飲みますか?」
俺はこのとき、話しかけられたことで孤独から救われた気がした。先程まで楽しかったはずなのに、何故か悲しくなって滝のように涙が出た。今この瞬間、俺に神様が舞い降りた。そして、神様はこう続けた。
「この苦しみを開放してくれると言われる、壺があるんですよ。よかったらー……」

一年後、相変わらず状態は変わらないままだ。
家族も恋人も友人もいない。借金すら抱えている。仕事もない。ニートだ。
でも俺の心は救われている。この壺と、あの時の神様によって。
だって神様は、俺の努力を知っているから。いつかご褒美をくれるはずさ…
自然と笑みがこぼれた。

7/27/2023, 11:58:04 AM