「あー、うまくいかねぇ…」
俺は小説の続きについて長いこと悩んでいた。
―俺は恋という恋をしてこなかった。
なのに恋愛がテーマで書き始めてしまった。
そして小説の中の二人は―キスをしようとしているところまで進展してしまった。
俺をさしおいて…
「ははっ…」
なんで俺はこの年まで恋という恋をしてこなかったのだろう。後悔と共に乾いた笑いがこみ上げる。
―――恋ってなんだろう。その先にあるキスをするって?それ以上は?
もうよく分からんくなってきた。この作品はもうやめよう。
俺は机の上にある構想をまとめたものを容赦なく破り捨てようとした、
――途端に愛着が湧いてきた。
ああ、こんな感じなのかな、恋って。
これまで一緒にいて当たり前だと思っていたものがなくなろうとした途端に離したくなくなる、みたいな。
恋をしたことなかったのに勝手に恋を理解したときだった。キスってのもその内理解できるんかね…
テーマ:Kiss
2/4/2023, 11:39:19 AM