名無しさん

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『子どものままで』

ちいさい頃、自分用のオルゴールが憧れだった。
くるくると回って踊る人形なんてないけれど
木箱に入る、小さなオルゴールの機械。
素朴な見た目なのに、箱から流れる音楽がとてもきれいで
宝石箱みたいでとても大好きだったそれは、いつの間にか家からなくなっていた。
「ざんねん、寝る前に聞きたかったのに」
そう言ってふてくされていた私も、少し大きくなった。
学校に制服を着て行くような、小さい頃の私なら考えられないほどの、大人に近い年齢。
今ならお小遣いもあるし、安いものなら買えるはず。
ちょっと背伸びをして、雑貨屋さんに売っていた小さなオルゴールを買った。

小さなオルゴールは、私のためだけに音を鳴らす。
くるくると回るゼンマイと、オルゴールの機械。
子供みたいな感性のまま大人になってしまったけれど、この憧れだけは子どものままでもいい気がした。
大人ぶるのは休憩、たまにはのんびりするのも悪くない。
ぼんやりとオルゴールの音色を聞きながら、私はそう思った。

ゼンマイを回す限度を間違えて本当に子どもみたいに壊しそうになったのは、その少しあとの話。

5/12/2026, 2:54:47 PM