貴女に言い付かった五年の旅を終え、貴女のところへ戻った俺が目の当たりにしたのは、貴女の庵のあった場所に建てられたひとつの小さな碑だけでした。
村の者に貴女が二年も前に亡くなっていたと聞かされた時の、体中から力が抜けるような底無しの喪失感を、今でも鮮明に覚えています。
ですから、こうして貴女が何度も何度も生を受けること、そしてそれを間近で見守れることは、俺の心を何より慰め、幸福で満たしてくれるのです。
あの恐ろしい喪失感を、俺が感じることはもうないでしょう。
貴女の魂があの大きな廻り続けるものに回収されるまで、俺は貴女にお供します。そして貴女の魂が回収される時、俺たちも共に回収され、あの大きな廻り続けるものの一部に戻ります。つまり、貴女と本当にひとつになれるのです。
ああ。俺は貴女を失うことが二度となく、あんな喪失感や息のできないほどの悲しみにも金輪際浸らなくていい。
そんな無上の幸福を与えられていることに、俺は心から感謝しているのです。
9/10/2024, 2:53:47 PM