柚子の香り
デート中。彼女からふわりと柚子の香り。
彼女が黙ってうつむきながら
ハンドクリームを手の甲に塗っていた。そして、クリームは手のひらにも念入りに塗られていく。
そしてその横顔は、退屈と語っている。
「ああ…」僕は察した。「脈ナシ」だな。
せっかく予約してとりつけた彼女とのディナーデートだった。
でも、彼女にとって僕は恋人対象にはなれなかった。
これからこのレストランを後にする。
差し出した手を「さっきハンドクリーム塗ったから」と笑いながら拒否する彼女の顔がイメージできてしまったから。
今夜こそは手を繋ぐつもりだったのに。
焦ってはいけない。まだ試合は終わったわけじゃない。
でも、ほんの彼女の仕草ひとつで
僕はこんなに心をえぐられている。
12/23/2022, 7:38:05 AM