無音

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【14,お題:麦わら帽子】

「お姉ちゃんはなんで麦わら帽子をかぶってるの?」

少し前に、小さな男の子に言われた言葉。
多分、夏でもないのに麦わら帽子をかぶっている私を不思議に思ったんだろう

「今夏じゃないよ?」

無邪気な質問だ

「これね、私の大切な人がくれたの」

「大切な人?お母さん?」

きょとんと首を傾げる仕草が可愛くて、少し笑みをこぼしながら「違うよ」と答える

「じゃあ、お父さん?」

「それも違うなぁ」

「友達!」

「んー違う」

「お兄ちゃん!」

「ち~がう」

「お姉ちゃん!」

「違うよ~」

うぐぐ、としかめっ面で考え込む男の子
表情がコロコロ変わって愛らしい。

......“あの人”からも私はこう見えていたのだろうか

「わかった!おばあちゃんだ!」

「んー違うなぁ」

「ええー!もうないよぉー」

男の子はむすーっとした顔で下を向いてしまった。

あれ、そういえばこの子

「君、お母さんは?」

「あ」

やっぱり

「もしかして、迷子だったりする?」

「......うん」

不安げな顔で泣きそうになる男の子

「じゃあ、お母さん探そっか私も手伝うよ」

男の子の手を握って、お母さんはどこかなぁ~?と語りかける
ゲームのようなテンションになってきたのか、男の子の表情が少し柔らかくなった気がする。





拝啓 神楽さんへ

あの時私を助けてくれてありがとう
今日、公園で迷子の子供を見つけました
神楽さんにも、あんな風に私が見えていたんですか?
あなたがくれた麦わら帽子、春なのにかぶっていたら「なんで?」って言われちゃったw
今どこに居るんですか?
もし逢えるなら、もう一度話がしたいです。
元気で居てください

                           遥

8/11/2023, 10:58:42 AM