元さん

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異形を愛す Part1

彼女は歌を愛し、人を愛した。人の居ない凍った浜辺で1人、彼女は歌を歌っていた。僕は彼女の歌をただ聞いている時間が好きだった。その時間だけは、この世界を忘れさせてくれるから。

僕の顔の1部は、生まれた時から焼けただれていた。いや、正確に言うと燃えていた。
奇妙な姿で生まれてきたものの辿る末路は、いつの時代も決まっている。僕が1人で浜辺に来ているのも、そういう理由だった。
その日も僕は1人で歩いていた。そこで僕は、1人の少女を見つけた。海に向かって歌を歌っているらしい。正直別に上手くなかったが、何故かその場を離れることが出来なかった。
ふと目が合ってしまった。気付かない間に僕は彼女の方へ近づいていたらしい。
僕を見るなり、彼女は言った。
「綺麗な顔。」
突拍子もない言葉に驚いたが、その言葉の意味を理解する頃には、泣いていた。
その日から僕の世界は、2つに分断された。

多分続く

7/27/2024, 4:21:11 PM