作家志望の高校生

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「あっっっつい!!」
体温をゆうに超える気温に、じっとりと纏わりつく湿度。そのどちらもが、俺の不快感を刺激してやまない。あまりの暑さに悲鳴を上げ、俺は買い食いを決行することにした。コンビニに入ると中はエアコンがよく効いていて、汗が引いていくのを感じる。若干寒いくらいの室内で、俺は目当ての棚まで一直線に歩いていった。今求めるものは、その冷たさと甘さで俺を癒してくれるアイスクリームただ一つだ。冷凍庫にぎっしりと詰められたアイスの中で、俺が選んだのは2人で分けることを想定されたアイス。味はホワイトソーダにした。誰かと分けて食べる訳ではない。2人分を1人で食べる、そこにロマンがあるのだ。
外に一歩踏み出した瞬間、俺の体を再び熱気が包む。湿度に日差しのダブルコンボで、さっき出たばかりだというのにもう店内の涼しさが恋しい。そそくさと店の裏の影に逃げ込み、アイスの包装を破った。くっついている2つを分け、1つを開ける。この暑さだと溶けるのも早いのか、少し吸い上げただけで簡単に中身は出てきた。ホワイトソーダの爽やかかつまろやかな甘みに癒されつつ、手持ち無沙汰で辺りを見渡す。蜃気楼でどこもかしこも揺らめいて見える中、ふと目の前を通った毛玉に気を取られた。
「あ、猫……」
その猫は相当頭が悪いらしく、さっきから何度も挑戦して、届かないと分かっている木の上の鳥を狙っている。ぴょんぴょんとその場で跳ねる猫が面白くて眺めていたら、いつの間にかアイスが溶けてしまっていたらしい。ぽたぽたと地面に溢れたアイスを見て、なんだか若干損した気分になった。俺もあの猫のことを馬鹿にできないくらいには頭が悪かったかもしれないな、と思いつつ、1つ目を食べ終わって2つ目を開けた。既に溶けたそれは開けた瞬間溢れて手を汚す。慌てて口に含むと、7割液体のアイスが口に流れ込んでくる。ほぼ飲み物となったそれを飲みながら地面に溢れたアイスに視線を落とすと、蟻がそこに寄ってきていた。一匹が寄ると、それ以外もどんどん寄ってくる。アイスの池は、いつの間にか蟻の補給所となっていた。こいつらの餌になったなら、俺が零したアイスも無駄にはならなかっただろう。そう思ってもまだ若干拭えない損した気分を抱えたまま、俺は食べ終わったアイスのゴミを捨てに涼しい店内に吸い込まれていった。

テーマ:こぼれたアイスクリーム

8/11/2025, 10:26:55 AM