沈溺 つろ (シズレ)

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※本作品には、暴力的または刺激の強い描写や、
身体的苦痛を想起させる表現が含まれます。
苦手な方は閲覧をお控えいただくことを強く推奨いたします。

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「いや、むしろ…」

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高校2年生の4月。

「え、てか桜咲いてんの?えぐ〜…」
桜見て口をぽかーんとあける楓(かえで)。

楓の横で歩きながら私はこう言った。
「まぁ…もう4月入ったし、桜くらい咲くでしょ。てか、うちらまた同じクラスとかおもろくね?」

「確かに笑」
そう言い、楓は少し汚れたローファーで小石を蹴った。

当然楓は声を大きくし、
「ねぇ聞いて花梨(かりん)!!Sereinの新曲聴いた!?」
「いや、まだだけど…そんなに良かったの?」
「がちで過去一レベルで神曲だったから聴いた方がいい!!」

そんな他愛もない会話をしていると楓が鼻歌を歌った。Sereinの新曲だろうか。

私は黒色のスクバからスマホを取り出し、YouTubeを開く。「Serein 新曲」と検索をかけるとMVが出てきた。「後で見るに保存」 のボタン押し、スマホを閉じた。

すると楓がこんなこと言い始めた。
「てかさぁ、もし死ぬならどの死に方がいい?」
「何…突然。病んでる?笑」
「別にそういう訳じゃないけど…そういうの考えちゃわない?」
「まぁ、わからなくもないけど…」

楓がスマホをいじりながら、
「私はまだどんな死に方がいいってのは決まってないけど、溺れて死んじゃうのは1番無理、苦しいのとか嫌じゃん?」と言った。

「確かに、死ぬときぐらい楽に死なせてほしいよね」
私がそう言うと、
「あ、わかってくれる?笑」と、彼女は微笑んだ。

太陽の光が届きにくくなってきた頃、いつも通り土手を通った。

「ねぇ…楓。ちょっと土手の方行かない?」
「え?どしたの花梨、なんかすんの?」
「ちょっと最近悩んでることあってさ、今しか話せないから話したいんだよね」
そう言い、私はポケットに手を入れた。

「花梨がそういうの言うの珍しいね、でも私家帰ってもどうせ暇だから全然いいよ」

私たちは靴で草を踏み潰しながら、川へ向かった。

「スクバどこ置く?」
「あ〜…ここに置いとこ」

中3の修学旅行のときに買った、ご当地キーホルダーが太陽に照らされ光っている。

少し緊張している私を見た楓が優しく微笑み、まるで小さい子に接するかのように言った。
「花梨、どうした?なんか嫌なことでもあった?どんなに話が長くても、花梨の悩み事ならいくらでも聞くよ」
「ありがとう、じゃあ…言うね」
「うん、ゆっくりで大丈夫だよ」

「正直さ、」
「うん?」

「邪魔なんだよね。お前。」

私に睨まれ、声を出せずにいる楓に向かってビンタをした。

「痛っ… ちょっと、花梨っ、何すんのっ…」
私の履いている黒色のローファーで楓を渾身の力で何度も蹴る。

「痛''っ!!花梨っ、なにして…」
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私は昔から何事も楓に負けていた。
勉強も、運動も、恋愛も、才能も、私には楓に勝てるものが何もなかった。

私が今通っている高校は偏差値が61。
楓が通っている高校は偏差値が68。
本当だったら私は楓と同じ学校に行く予定だった。
今は''私だけ''第1志望の高校に落ち、滑り止めで受けた高校に通っている。リュックにつけていた「合格祈願」のお守りはちぎって捨てた。

私と楓は中学生のとき、バレー部に所属していた。
大会で優秀な結果を残すのも楓。
みんなからちやほやされるのも楓。
バレーを誰よりも楽しめていたのも楓。

中学3年生の頃、当時私が好きだった同じ部活の男の子がいた。今までずっとアピールしてきたが、すぐ他の女のモノになりそうで怖かった。
とある日の放課後、好きな人を呼び出し告白をした。結果は「今は楓のことが好きだから花梨とは付き合えない」と言われ振られた。

楓は昔から私よりも顔も可愛くてスタイルも良くて、
性格も良くて記憶力もいいし、歌が上手くて絵が上手くてピアノが弾ける。卒業式の伴奏者を担当するくらいに上手い。

何もかも、全部、全部私より上手いしできている。
そんなお前は私からしたら邪魔でしかないんだよ。
いつもいつも私の邪魔ばかりしやがって。
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「あ''ぁもう…!!黙れ!!うるさい!!!!」

「っ……」

初めて見る私の姿に動揺しつつも足を抑える楓。

楓の手を掴み、川に入る。
冷たいが、今はそんなのどうでもいい。
早くこいつを、消さないと。

「かりっ…落ち着い…」
「落ち着けるわけねぇだろ!!さっさと死ね!!」

楓の長い髪の毛を掴み、思いっきり底へ沈める。
じたばた暴れていても、一生懸命押さえつける。
早く、早く死ぬように、ずっと、ずっと力を込めて押さえつける。

数十秒ほど経つと静かになり、口から出ていた泡は出なくなった。
押さえつけていた楓の頭を離す。
髪の毛を掴み、顔を確認する。

「………」

私はやり切った。
邪魔なものを消した。

楓だったものを引きずりながら川を出た。
草の上に放り投げ、顔面を蹴り上げ、殴った。
私のスクバからカッターを取り出し、楓の腕、足を思いっきり切った。私のワイシャツの裾に楓の血が付いた。脂肪まで見えてきたが、そんなのもう知らない。

そして、最後に顔面に切り傷を付け、川へ放り投げた。

疲労でふらふらしてきた。
すると頭の中から「それでいいの?まぁ…もう選び直せないけど」と聞こえてきた。誰の声なのかすらわからない。

「変な幻聴っ… 気持ち悪っ…」
口から、お昼に食べたお弁当の中身が出てきた。

「お''ぇっ…ゔぇ……」
嗚咽が止まらない。

だけど、早くここから離れないと、私が殺したことが誰かにバレる。黄色い吐瀉物が口についたまま、びしょ濡れのスカートを持ち上げ、上へ駆け登った。

上から川を見下ろす。
楓がうつ伏せになり、水に浮かんでいる。
辺りは赤色で染められていて、髪の毛は絡まりぐしゃぐしゃになっている。

「これで、いい…」



「いや、むしろ…」





テーマ 「それでいい」
作品名「これがいい」

4/4/2026, 12:00:08 PM