檸檬味の飴

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死んだ。



私の、夫が。



突然のことで、頭が回らない。



子供はどうするの?



貴方の大好きだった、手芸は、もうしないの?



机の上に置いてある、あの作りかけはどうするの?




なんでだろう。



心に空いた穴に、重くて暗い風が、通り過ぎている。



当然、埋めるものはない。



ついさっきまで、この我が家で、冷たい中華素麺を食べて、



「お父さん、きゅうり入れすぎだよ」


とか


「今度はカニカマとハムも一緒に食べたら美味しいかもね」


とか、言っていたのに。


少し遠くの公園に忘れてきてしまった、

彼から貰った、花柄の可愛いバックを、


車で取りに行ってくれた。


着いて行こうとしたら、


「いや、悠太と一緒におって。外も暗いし、悠太もお留守番は寂しいやろ。」


と、拒否された。いや、優しさだ。


「行ってきます。悠太を宜しく」


という言葉が、最期だった。

でも、最期だなんて、本当は思いたくない。


今にもひょこっと帰ってくるんじゃないか


と、思ってしまう自分を、


責めればいいのか、慰めればいいのか。


それすら、考える頭は無かった。




でも、宜しく、というのは、そういう意味なのかな。





御題:喪失感   2023/09/10

9/10/2023, 10:57:59 AM