しじま

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 ぐっと一歩を踏み出すたび、ぎしりと全身が軋んだ。
それでも構わずにターフを、蹄を叩きつけるように力一杯蹴る。

 前へ、前へ、ただそれだけを望む。

背に乗る彼が手綱を引くが、完全に無視して、ミシミシと嫌な音をたて始めた足でカーブに挑んだ。
高速で過ぎていく白いラチが途切れ、最後の坂が見えた。

 アレを登ったら、終わりだ。

大きく息を吐いて、口の中の少し不快な金属を噛む、彼はまだ手綱を引いていた。
 大歓声に応えるように坂を駆け上がる、後ろからはまだ誰も来ない。
痛みはもうわからなくなっていた。

 ゴール板まで、もう少し。

 感覚を頼りにキラキラと光る緑の芝の上を走り抜けた。

割れんばかりの大歓声に、誇らしい気分になる。
 足の痛みがぶり返してきたが、もう少しだけこの高揚感を味わっていたかった。

テーマ「誰よりも、ずっと」

4/10/2023, 4:58:06 AM