霜月 朔(創作)

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カーテン



明かりの灯らない、
静かな部屋の中。
月明かりだけが、
私達を照らします。

この世の名残に、
二人きりの結婚式を挙げましょう。

私が身体に纏うのは、
ドレスの代わりの、
純白のシーツ。

私が頭から被るのは、
ベールの代わりの、
レースのカーテン。

お互いの指に嵌めるのは、
二人にしか見えない、
幻の指輪。

貴方が私の隣に、
居てくれるのなら、
私は幸せです。

煌びやかなドレスも、
華々しいブーケも、
祝福のライスシャワーも、
無くたって、構いません。

撓やかに厳かに。
そして…密かに。
愛を誓い合い、
誓いの口付を交わします。

病める時も。健やかなる時も。
富める時も。貧しき時も。
そして、
…死せる時も。

時が止まり、
冷たくて静かな闇が、
私と貴方を包みます。

握ったこの手は、
決して離しはしません。
そして、二人で、
そっと旅立ちましょう。

…永遠の眠りへと。

10/11/2024, 6:21:12 PM