視線の先に映るのはいつも私じゃなかった。
「あのね、今日学校のリレーでね。」
「ふーん。よかったわねー。」
私の母は言葉は返してくれるが目線はスマホにあった。お気に入りのアイドルとか、コスメとか、好きな人のことで忙しかった。
「あのね、給食のピーマン食べられたよ。」
「おー。」
私の父は褒めてはくれなかった。反応をするだけ。目線はパソコンにあった。仕事で忙しい人だった。
私は、とにかく誰かの視線の先に居たかった。誰かの瞳に映りたかった。だから、とにかく頑張って勉強をして有名な学校に入ったり、賞状を取ったりとしたが、だんだんとそれが当たり前になっていき、逆に落ちてしまったときに怒られるようになった。
私は一人で頑張れる。そういう風に先生たちも思ったらしい。「貴方は一人でも大丈夫よね。」そんな風に言われて、学校の中の問題を抱える子たちを見ることがほとんどだった。
誰も見てくれない。誰も褒めてくれない。私は誰かの視線の先に居ることが出来ない。
だから、死んだんだ。死んだら見てもらえると思ったから。私の抜け殻を。私の仏壇を。私のお墓を。
最初の頃は皆見てくれていた。泣いて、生きていた頃の私をたくさん褒めてくれた。「頑張ったね。」とか「気づいてあげられなくてごめんね。」とか。
けど、だんだんと皆私のことを見なくなっていった。悲しみも涙と一緒に流れてしまうらしい。
唯一見てくれたのは親友だけ。親友は常に私を見てくれていた。賞状を受け取るときも、成績を公開されたときも、私が飛び降りたときも。
そして、私が地縛霊になった今でも。
No.23 _視線の先には_
7/19/2024, 2:46:46 PM