シオン

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「なんかあれ、しよう」
 権力者がそう言った。
「……………………………………」
 無言で怪訝な目で彼女のことを見れば、どうやら名称が思い出せないらしく、うーんうーんと唸っている。
「あの、あれ。手遊び的な」
「アルプス一万尺とかのやつかい」
「違う、歌じゃない。あの……」
「指立てるやつかい?」
「違う。増えてくやつ」
「………………ああ。最初両手人差し指から始まるあれか」
「そう!!」
 一気勝ちを狙うために片手に終結させるやつと、堅実に行き過ぎて終わらないやつがいたな、なんて思い出した。
「あれ、やろう」
「…………なんで、急に」
 突拍子もなくそんなことを言ってきた理由を探るためにそう答えると彼女は目線を泳がせながら言った。
「…………つまらない事でも、平凡なことでも、君と少しでも一緒に過ごした方が一人よりは楽しいかな〜なんて、思っちゃって………………」

8/4/2024, 3:02:38 PM