白糸馨月

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お題『突然の君の訪問』

 呼び鈴が鳴ったので出たら久々に会う友達だった。大学時代、すごく仲が良かったけど結局就職した会社が忙しすぎて疎遠になっていた。でも久しぶりに顔が見られてうれしい。

「やっほー! 今、あがってもだいじょーぶ?」

 気の抜けた感じがする喋り方は相変わらずで私は二つ返事で「いいよー」とオートロックを解錠する。

 友達の手にはチューハイ缶がたくさん詰まっているビニール袋があった。私は自分の部屋にうながすと、友達がそこに座る。

「なんだかそうしてると、大学時代に戻ったみたいだね」
「うん! ってか、大学から住所変わってなくてびっくりしたー」
「引っ越してるかもとか思わなかったの?」
「あー……もしちがったらそれはその時って思ってたとこ」
「そういうとこ、変わってないよねー」
「うん!」

 そう言って友達は、チューハイを手にしてプルタブを開ける。私も続いて開けると、かんぱーいと缶をぶつけ合ってお互いにグビグビ飲んだ。

「ってか、なんで急に来ようと思ったの?」

 と私が聞くと、友達がんーと笑みを浮かべた後、急に体をくっつけてきて頭を撫で始めた。

「なぁんか、X見ててさぁ。最近元気なさそうだなぁって思って。きみの彼氏? 最近、別の女の子との画像上げ始めてるしさぁ。そこからきみのツイートがなんだか元気なさそうで」
「あ、バレちゃった?」
「だから、もしかしたら元気なくしてるかなと思って来ちゃったぁ」

 そう思った瞬間、私の目から涙がこぼれた。

「そう、もう別れたの。その女、浮気相手ぇ」
「うわ、マジでクソじゃん! もう今日は飲もう!」
「うん、来てくれてありがとう」

 そう言って私は友達にくっつきながら勢いよく缶をあおった。

8/29/2024, 3:43:17 AM