たろ

Open App


※ご注意※
ぼんやりIF歴史?
ぼんやり二次創作?
ぼんやりクロスオーバー?
出てくるのは、オリジナルのモブ。
混ざり物ごった混ぜにしてます。


〈旅路の果てに〉


ふと気が付くと、見たこともない景色に囲まれていた。
(まともに帰れる訳もない、ですよね。)
そこは不思議な檻か、座敷牢のような場所だった。
「気が付いたか。―――へ、参じよ。」
音声だけが聴こえてきて、カチャリカチリと金属音が響いた。
「案内する故、申した通り、―――へ、参じよ。」
先導する音声の言う通りに、潜り戸を通り抜け、通路を渡り、右へ左へ。
「その扉を開け、中へ入るが良い。」
重たげな大きな扉をそっと押し開けて、中へと足を踏み入れる。
(…ひ、広いし、寒い?)
ひんやりとした空気は、少し淀んでいるような気がした。
「前へ。階に立ち、尋問に応えよ。」
音声だけが高い天井に木霊し、天井の奥は闇に閉ざされて、何も見えない。
言われた通り、前方に紋様が書かれた桟橋の先に似た造りの場所へ、足を踏み入れる。
「汝、何故に時を渡り、我欲の赴くままに、時を掻き乱したのだ。」
音声だけが滔々と流れて行く。
『龍神様との約束を果たし、穏便にお還しする方法を探していたら、偶然そうなってしまって…。想定外の事だったんです!』
口元を動かしても、はくはくと息が抜けて、声にならない。
「応えよ!何故、何も申さぬ!」
苛立つ声が、大きな雷のように落ちて来る。
ひゅっと喉元が鳴って、恐怖に身体が竦み上がる。
「待て!応えようとしているのを聴かぬのは、どういった了見だ?委員会とやらが、聴いて呆れる。」
若い男の声が後ろから聴こえてくる。
「悪意なし、と見受ける。何かに、巻き込まれたのだろう?同族ともとれる。こちらで預かりたい。」
顔の前に白い布を垂らした長身の男が隣に立ち、闇を見上げていた。
「時を渡り、時を歪めたること甚だし。歪めし時を、正しき時へと還せ。」
厳かに告げる声が響いて、気配が消える。
「さて、君の行き先を考えよう。」
隣に立つ長身の男が手を取って、来た道を引き返す。


気まぐれな神様による大抜擢の代償は、簡単には帰り路に辿り着けないということらしく、たくさんの時代を彷徨って、終わりがない様だった。
『…諦めたほうが、早いのかな。』
心が折れそうになるのをぐっと堪えて、新たな旅路を辿ることにした。

1/31/2024, 10:05:56 AM