fumizuki

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俺は隣の男が未来に不安を持っていることを知っている

俺の夢を叶えるために神輿へ無理矢理乗っからせた男
こいつはその夢が叶ったら、俺の隣にいる理由がなくなるんじゃないかとか、才能を抜いた自分はつまらなくて飽きられるんじゃないかとか
そういったことを悩んでる

なんで知っているかというと記憶をなくす勢いで飲ませたからだ
そうしたらさっきの悩みをお前そんなに喋れたのかと驚くほどに饒舌に打ち明けたのだ
翌朝は酷い頭痛と共に目覚めたようで何も覚えていないのだという

酒で潰したことはさておき、俺がそんな薄情な男に思われていたことが心外だった
確かに自分は飽き性だし、この先関わる大勢の人間の中には面白いやつは凄いやつ、もしかしたらこの男に似たようなやつと会うかもしれない


しかし、衝撃的な出会いに加えて、紆余曲折、複雑多岐あってそれでも一緒にいると決めた相手を、夢が叶った程度で手放す気などさらさらない


それくらいに俺はお前に惚れ込んでいるというのに、なぜ分からないのか
興味を持ってくれた奴が俺が初めてなんて言うけど、俺だって誰かにここまで心乱されるのはお前が初めてなんだけど
そもそも最後まで一緒にいてよって約束の前に、退屈しない人生に連れてってやるって俺から約束したし
夢が叶った後は俺の一生を賭けてどんなにこいつが凄いかをプロデュースしてやるつもりだ

そう俺が考えているとはつゆ知らず、今日も無表情で不安を抱えているであろう相棒に駆け寄る
此方を映す度に光を宿す双眸は、気づかない方が難しい
その裏に抱えているものも、分かりやすく伝えてくれても良いのに

シラフで一言悩みがあると言ってくれるまで、言葉が足りないとどうなるか思い知らせてやろうと思う

お前も少しは俺の苦労を味わえってんだ!

6/18/2023, 9:55:53 AM