なぜ泣くの?と聞かれたから、理由を言った。
言ったら笑って言い返された、「重いね」と。
友人から見ると物事を重く捉えすぎているのだそうだ。私は。
私はそんなつもりはなかったのだが。
友人は欠伸をしつつ続ける。
「そんなんじゃあ、いつまで経ってもそのままだよ」
そのまま。現状維持。停止。私の人生にとっての良い所であり悪い所だといつも思う。
私はかわらないものが良い。安心するから。
私は友人に言い返す。
「仕方ないじゃないか。私は私の過去を歩いてきてしまったんだから。」
隙ありというように言われる
「そういうところさ。君の良くないところは。まあでも、いい所でも、ある。」
優雅に頬杖をつきながらこちらを見てくる瞳の、なんと美しいことか。
「君はね、考えすぎるし思いやりすぎるし正直すぎる。素直な君は素敵だ。だがね、
この世界はそんなに綺麗に出来ていないんだよ。そろそろ気がついているとは思っているけれど。
」
縹色を揺らしながら友人は綴る。
「もっと、君らしいことがあるんじゃないかと思うのさ。やりたいことをやりなよ。君の綺麗さが侵されないように。させないように。声をあげろ。歌を歌え。よく寝て、食べて、最後にはいっぱい笑うんだ。己を十二分に謳歌して、結果的には大往生を!!」
にこ、と笑い白い毛並みを擦り付けてくる。
「君はひとりではないから。」
小さな手を頬に伸ばしてくる。ピンク色の肉球が頬の熱をいくらかマシにしてくれた。
そうして友人は満足したような笑みで目を閉じた。最後とはいえまったく壮大な話をしてくれたものだ。
もう泣かないよ。
8/19/2025, 10:45:55 AM