Open App

ずっとこのまま

永遠という時間を得た時、人間は喜びに満ち溢れる。実際は永遠という存在は無く、ただ私達がそうであって欲しいからと望んでいるだけではあるが。
ずっとこのままであってほしい。そう願うのは人生の中でそう珍しいことでも無かった。
例えば、彼女という綺麗な人間と出会えた時。彼女の優しくあたたかな微笑みを初めて見た時。彼女が嬉しそうに頬を染めて頷いてくれたあの時。
私は何度も何度もこの時間が続けばいいのにと願った。それだけの幸福を彼女から教えてもらったから。それだけ彼女の事を好きだったから。
彼女は私達を貫く心無い言葉に傷付けられても、あなたがいるから大丈夫だ、と瞳に光を灯し続けた。
この狭い村で私と彼女の関係が受け入れられるなんて幻想はとうに捨て去って、耐え続けてくれた。
強くて、脆かったひと。
彼女がふつりとそれを終えた時に、私にどれだけの後悔が降りかかったかは定かではない。
ただとにかく彼女はもう居ないのだと、彼女とまた笑い合うことはできないのだと、困惑する頭でそれだけを理解していた。
壊れた人形のようになった彼女を抱いて、私の心の中は今嵐のように荒れ狂っている。永遠を望んでいた自分さえを馬鹿らしく思う。
もっと、彼女という綺麗な人間を知りたかった。彼女の優しくあたたかな微笑みを見ていたかった。また彼女に嬉しそうに頬を染めて頷いて欲しかった。
震える手で冷えた彼女の指に、銀に輝いた指輪をつける。渡す事が叶わなかった悲しみに溺れ、視界がぼやけ見えにくくなってきた。
彼女の呼吸の音は聞こえない。彼女はある意味で永遠を手に入れたと言えるのかもしれなかった。それなのに喜びの形相は見られなくて。
彼女が好きだった。守りたかった。ずっと抱いていたこの願いなど、私みたいな弱くて臆病な女が叶える事は無理だったのかもしれない。
ひとつだけ息を吐いた。彼女の頬を撫でる。永遠に色づくことのない頬。視界にも入れたくないほどその事実が嫌で、それでも愛おしい人のものだから目を離せない。
傲慢で酷い私は、生前と変わらず抵抗も何もなく私のそばにいてくれる亡骸から離れる事ができなかった。
だけど、もう少しで私もそちらに向かう。彼女はこんな私と永遠を刻んでくれるかなんて、分からない未来の事など考えたくもない。
彼女は弱かった私を許してくれるだろうか。また笑ってくれるだろうか。優しい彼女ならきっと包み込んでくれるけど、不安の気持ちは消せないから。
やはり願わくばどうか、ずっとこのまま。

1/12/2026, 2:52:06 PM