詠み人知らずさん

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「高く漕いだ方が勝ちだ」
「いくぞ!」
低いとこらから高いところへ
ねじり曲がって絡まって
いろんな方向へ行った
まるで一つの紙飛行機のように
大空へと飛びだった
その対象が彼だった

彼の死因は不明だ
だからこそ、ここ最近ではこのブランコは
「呪いのブランコ」と呼ばれている
いわゆる学校の七不思議みたいな感じだ
乗ったものは3日以内に病死か自殺らしい
これを考えた人の想像力はすごいなと私自身も正直飽き飽きとしている
でもただ彼と私には大切な思い出がある
誰にでも壊すことのできない大切な思い出が
私はそっとブランコに手を添えた
「寺塚さん!!触っちゃ危険よ❗」
三つ編みメガネの生徒会長が言った
「大丈夫だよー、彼が望んでいるのは私だから」
「きっとこれでもう終わる」

ブランコを漕ぎながら
昔彼はこう言った
「僕もブランコみたいになりたい」
「大空を飛んでみたい」
彼の目は水平線のように美しかった
「そっか、なれるよ❗」
「きっと」
彼とは昔から長い長い付き合いだった
保育園、幼稚園、小学校、中学校に続いて
だけどある日ブランコに乗っている途中彼に背中を押された
今まで何の落ち度も無かったはずだ、恨まれるような行動も言動も
その場で擦りむいた私は彼を見た
皮肉そうに笑って
「死ねばいいのに」と、ただ一言限りで去っていった
それからが始まりだった
叩くにも蹴るにも当然当たり前
それは彼にとって日常茶飯事だったのかもしれない
彼にはもう罪悪感も純粋な目も心も気持ちも一つのこらず全て消えてしまったのだ

その頃には彼の両親も離婚の最中だったため、彼にも色々あったのだろう

例えその行いが悪いと思っていても
それすら彼には癒しに見えたのかもしれない

彼は一人になってブランコに乗っていた
「死にたいと」独り言を言っていた

サプライズといって屋上に呼び出し
嘘をついた
「屋上って高けーなー」
彼は舌なめずりをした
「なぁ、人もいないしやろうぜ」
彼は後ろを振り向く
「ねぇ、知ってる?ブランコって一度漕いだらなかなか止まらないんだよ?」
私はそっと背中を押した
「今まで辛かった、だけどもう大丈夫」
「今からラクにしてあげるから」
「何言って」「あっ」
彼は日が沈む最中ゆっくりと遠ざかっていった
「良かったね、夢がかなって、、、さよなら」

その音は激しい衝動音ではなく、花火のように聞こえた

私はきっと呪われる
今日も明日も明後日も





2/1/2024, 5:05:40 PM