【愛言葉】
好きだよ、だなんて。
どこかにふわふわと飛び出して戻らない心のまま、そんな事を言われたって。
どうせ、貴方は"私"を見ていないのでしょう?
―――
いつの日だったか。
憎たらしいほど晴れていた気もするし、泣きそうなほど曇っていた気もするし。何なら空が泣いていたかも知れない。
そんな事すら覚えられていないのは、その日にガツンと頭を殴られたような衝撃を受けたから。それで全て飛んでいったのだと思う。
「愛させてくれ」
だなんて。字だけ見ればロマンチックな告白なのに、勿体ない。
絶望したような声が、震える体が、光すら返さない瞳が、真っ直ぐに自分の心に向けられていて。
素直に言えば、怖かった。
自分のこの後起こす行動で、この眼の前の人間は明日生きるのか決まってしまうことが、1+1を解くよりも簡単に解ってしまったから。
「愛して」
喉の奥から絞り出したその言葉は、彼にとっては正解だったようで。
壊れ物を扱うように優しく手を取られて。私を見た瞳は私を見ていなくて。ハートにも見えないだろうぼろぼろな形の愛を向けられて。
その日、私も何かが欠けてしまった。
「 」
その愛言葉は、" "が壊れていく合言葉。
10/26/2023, 1:11:58 PM