たぬたぬちゃがま

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とぽぽぽぽ。
割材はサイダー。レモンサワーの素に対して9割くらい。レモン果汁を足してできあがり。
「それ度数あるの?」
思わず口に出してしまった。こっちが飲んでいるのは缶ハイボール。割材を使うものはもっとガツンと飲みたい時なので、彼の行動が奇妙で仕方なかった。
「微アルコールが、好きなんだ。」
ぼそり、と呟くように答える。まあ最近は若者のアルコール離れといいますか、スマートなドリンクと言いますか、多様的な飲み方が推奨されている。
「じゃあなんで宅飲みしようって誘ったのよ。」
「これも立派なアルコール……。未成年は飲んじゃだめ。」
私にとってはレモンサイダーだ。という言葉は飲み込んでやった。もともと口数が少ない彼が、この宅飲みの時だけほんの少し饒舌になる。ということはこの低アルコールでも彼にとっては十分なんだろう。缶ハイボールがなくなったので私もレモンサワーを作ることにした。

とぽぽぽぽぽ。
先ほどと違って注いでいるのはレモンサワーの素だ。炭酸が少なくなるのが難点だが仕方ない。
彼がうわぁ……と呟くのを私は聞き逃さなかった。
「私にとってこれが適量なんです〜。」
「楽しそうだから、なんとなくそれはわかります。」
肝臓が可哀想、とか言われると思ったから意外だった。
「買った甲斐がありました。」
つん、と結露がついたペットボトルをつつき、ふわりと笑った。
普段しない表情に、私は妙に気恥ずかしくなってペースも考えずにグラスをあおった。
ぐるぐる、と浮遊感が少しずつ増えていく。炭酸がぬるくなってきたな、と思う頃には、彼の声がどうやって聞こえているかもよくわからなかった。


【ぬるい炭酸と無口な君】

8/4/2025, 8:38:56 AM