泥(カクヨム@mizumannju)

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『軌跡』

塾でバイトしていると、やはり私の第一志望だった学校を目指す生徒に出会う。その度に、私は羨ましくなる。まだ、この人には可能性があるんだ、と。彼らのまだ明るい瞳を、私はなかなか見ることができない。
いつまで引きずるつもりなのかわからないけれど、でも、私が思うのは、ここまで引きずっているのは、当時にそれだけ頑張った証なんじゃないかということ。
私は、彼らをその学校に合格させることで、私が合格したと錯覚しようと思った。最低だと思う、けれど、それで彼らが第一志望に合格するならいいじゃないか、とも思う。私が何年も夢見たその学校での生活。私は何度もその学校を調べた。だからきっと彼らよりは知っていると思う。その全てを使って、彼らを受からせて、私も受かった気になって、この泥みたいな感情を洗い流そう。
なんだかそう思うと、前向きになる。当時、泣きながら帰った日がたくさんあったことを思い出す。ああやって、ふらつきながら歩いた日も、今日につながっているんだ、と。こういうことを「軌跡」と呼ぶのだろうと、私は全員が帰った後の自習室を見て思った。
どうか、彼らが美しい軌跡を描く人になりますように。

4/30/2025, 2:48:38 PM