池上さゆり

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 私は常に、寂しかったのかもしれない。
 だから、いつも誰かに甘える日々を繰り返していた。その相手はお母さんだったり、友達だったり、彼氏だったり、セフレだったり。
 とにかく、誰でも良かった。すごいね、頑張ったね、もう頑張らなくていいよってそんな言葉がほしかった。みんなに、私だけを見ていてほしかった。
 それなのに、ある日家に帰ると、お母さんは紹介したい人がいると言い出した。出番を待っていたかのように現れたその人はお母さんより一回りほど年上の男性だった。その瞬間、私は怒りを通り越して、泣きたくなった。
 どうして、私だけを見てくれないのと。二人だけの生活じゃ不満だった? 私だけじゃ足りなかったの? なにがいけなかったの?
 問いたい言葉はたくさんあるのに、なにも言葉にならない。苦しくなって私は家を飛び出した。
 スマホを開けて、彼氏に電話してみる。
 今日は予備校があるから会えない。
 友達に電話してみる。
 もう寝るから明日でもいい?
 セフレに電話してみる。
 応答すらしてくれなかった。
 お母さんのことを誰よりも愛していたのは、私のはずなのにお母さんはそうじゃなかった。寂しい、寂しいよ。ネオンが光る街の中を歩いていると、平成のギャルのような服装をした男の人に声をかけられた。なんで泣いてるのと。私は縋るように心の内を話した。この人が、今日の寂しさを埋めてくれたらいいのにとすら願った。それなのに、その人が言ったのは。
「あんたも、お母さんと同じことしてんじゃん。お母さんが一番なのに、寂しくなったら彼氏、友達、セフレに連絡するってどうなのよ。ドン引きだわ」
 たった一つの希望も打ち砕かれた。私に飽きたのか、その男は手を振ってその場を去った。違うのに。私はお母さんだけに甘えていたら負担になるからと思って、その発散先を増やしていただけなのに。
 それでも、もう元には戻らない。雨でも降ればいいのに、空には満月が輝いている。ネオンが光る街の中で私は独りだった。

3/3/2024, 7:19:57 AM