『最後の日』
世界の終わりって、突然やってくるものだと思ってなかった。漠然と、世界の終わりが来ることをいつか知らされるのだと思っていた。
だが、それはある日突然光を放ち、私たち人間も、動物も、地球上で生きるすべての命が一瞬にして灰になった。
どのくらい眠っていたのか分からない。
私は目が覚めた。
私は死んだはずだった。
あの日、皆とお喋りをしながらふと窓の外を見た。まばゆい光に目を細めたと思った次の瞬間からすでに意識はなかったはずだ。
けれど生きている。
見渡す限り周りの建物は全て倒壊し、真っ黒焦げだった。私たちが済んでいた場所なんて分からないくらい全てが平らで、遠くまで同じ景色が見えた。
色がついているのは空の色だけで、他は全て灰色だった。
私一人だけが取り残されてしまったのだろうか。
だとしても、なぜ私は生きていられているのだろう。運良くあの光から逃れられていたとしても、これくらいの被害になるにはガスが発生していてもおかしくはない。
私はなんともなかった。
そしてふと、隣を見た。
となりには人間が横たわっていた。
「………ユーリ!」
私が世界で一番大切だと思っている恋人、ユーリがいた。
ユーリは生きていて、ただ眠っているだけのように見える。私は必死に起こした。
そして奮闘の末、
「…………うるさいなぁ…」
ユーリを起こすことに成功した。
「ユーリ!……よかった。私一人だけかと思った」
「………え?」
ユーリはあたりを見回し、どうして、とか細く呟いた。
「…俺、死んだはずじゃ…?確か、凄く眩しい光に飲まれて………」
「私も、そこまでの記憶しかないの。
どうして私たち生きてるんだろう。」
鳥の鳴き声も聞こえない。
ただ風が吹いているだけだ。
「…最悪だ」
そう、最悪だった。この世界は死んだ。
生きるもの全てが居ないこの世界は、私たちが食べるものもない。住む場所もない。
私たちは遅かれ早かれ死ぬのだ。
なら、あのときそのまま死んでいたかった。
「ユーリ、どうしよう。」
「どうするもなにも…
もう、なにもないんだろ…?」
見渡す限りの灰色は、ずっと先まで続いている。
絶望しながら、私たちは歩いた。
不思議とお腹は空かず、なおさら私たちを憂鬱にさせた。
そして、地球に異変が起き始めた。
「…また地震か」
「最近多いね。」
「…地球が、本当に最後を迎えようとしてるのかもな。」
「そうなのかな」
私たちはお腹が空かない私たちを考えた。
なんのためにあの日、生き延びて今を生きているのか。
「……地球が最後を見届けて欲しかったのかな」
「そうかもな」
地球が崩壊する。地面が割れ、空は裂けた。
私たちはその最後までずっと共に居た。
そして地球の最後を見届けながら、
私たちと共に地球はしっかりと終わりを迎えた。
またいつか、何処かで生まれ変わることが出来たら。
お題:《世界の終わりに君と》
6/7/2023, 11:22:07 AM