やわらかな光
ある日、数人の若人が小さな廃教会に忍び込んだ。
鬱蒼とした森の中にひっそり佇む壮大な歴史の面影。
色褪せた聖人の絵画。鳴らないオルガン。
壊れた石像。枯れ果てた泉の跡。曲がった本棚。
そして、あたたかい光が差す割れたステンドグラス。
ステンドグラスには腕を広げる女神が描かれていた。
若人たちはそれらを見て物語を綴った。
彼らの妄想が作り上げた全くデタラメな御伽噺を。
「この教会の神父が革命を起こしたんじゃないか。」
「ステンドグラスの女神は小さな泉で目覚めた。」
「本棚で見つけたこの本は彼らの日記だったとか。」
「この石像に彫られた者達が共に戦った。」
若人たちの物語は実に鮮やかで、残酷で、美しかった。
まるで本当にそんな歴史があったかのように話すのだ。
やわらかな光に照らされながら彼らは話し続けた。
光とともに彼らを抱くガラスの中の女神は微笑んでいた。
………。
そんな語り手達の知らない話をしよう。
森の中にひっそり佇む小さな廃教会。
まさに若人たちが白熱するその歴史の面影の中だ。
今よりxxx年前、そこでは一人の神父が仲間たちを集め、共に革命を起こしたという。
10/16/2024, 12:28:50 PM