かたいなか

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「終わり無き旅、亡き旅、泣き旅、鳴き旅。
……『鳴き旅』って、麻雀の長期戦か何か?」
ぶっちゃけ、「どこ」に期間を設定するかで、終わる終わらないは変わると思うんだわ。
某所在住物書きはポテチをカリカリかじりながら、今日も今日とて途方に暮れている。
人生を終わりの無い旅と定義することは可能かもしれない――考察範囲を生きている間だけにすれば。

「お題の『なき』が平仮名だから、ここをあれこれ漢字変換でいじれば、何か書きやすいものが出てくると思ったんだがな。結局全部難しいわな……」
終わりが無いことを、「イタチごっこ」と曲解することは妙案かもしれない。物書きは己の腹を見てひとつ閃く。すなわち体重増加とダイエットのそれだ。
「だって美味いモンは美味い。仕方ねぇよ……」

――――――

鳴き旅終わり、グッバイ泣き旅、亡き旅の終わり。
エモい漢字変換をポンポン閃いては「無理、書けねぇ」で絶望し、案をポイポイする物書きです。
今回はこんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益ゆたかなお餅を売ったり、お母さん狐の営む茶っ葉屋さんのお手伝いをしたり、花と植物とキノコあふれる神社の大庭をパトロールしたりして、コンコン、しっかり人間をお勉強しておりました。

さて。その日のコンコン子狐は、稲荷神社本殿の玉の緒の下で、くるくるくる、自分の尻尾を追っかけてエンドレストラベルをしておりました。
だって参拝客が来ません。誰も遊んでくれません。
お父さん狐とお母さん狐はそれぞれ漢方医と茶っ葉屋さんとして勤労中だし、おじいちゃん狐とおばあちゃん狐は人間のお金持ちな「オエライさん」の要請で、自業自得案件の厄払い中。
くるくるくる、くるくるくる。だぁれも遊んでくれないので、コンコン子狐、自分の尻尾を追いかけて、おいかけて、エンドレストラベルです。

何分、尻尾追いの旅を続けていたでしょう。
「終わらないと思ってた旅路が突然切れた気分さ」
コンコン子狐、人間の何倍も高性能な自慢の耳で、人間2人分の足音と話し声をキャッチしました。
「『終わらない旅路』?」
「加元さんの執着の強さは、お前も知っているだろう。ずっと追われ続けると思っていたんだ。私が東京から離れるか、折れてあのひとのモノになるまで」

「お前は『物』じゃない」
「いいや。物だったよ。あのひとにとって恋は鏡、恋人はアクセサリーかジュエリーだ」

2人のうち片方を、コンコン子狐知っていました。
メタい話をすると去年の9月14日頃。
その声は「夜明け前」、この神社でパンパン手を叩いて、悪しき恋人から自分の大切なものを守ってほしいと、美しく尊い願い事を神社に託しました。
というかこのひと、お母さん狐の茶っ葉屋のお得意様です。子狐の頭や腹を撫でてくれる常連客です。
お礼参りかしら。それとも子狐を撫でに来てくれたのかしら。 まぁ前者でしょう、そうでしょう。

「あれほど簡単に加元さんが私を手放すとは思わなかった。去年の7月の『アレ』など、まだほんの少しだけトラウマモドキなのに」
「付烏月のやつがなぁ……」
「結局何をしたんだ。付烏月さんは?」
「『事実を述べた』、『左手の薬指を見せた』、『結果加元が盛大に勘違いして自爆した』。以上」
「それは聞いた。具体的に、何を言ったんだろう」
「本人に聞け」

話し声と足音が、ゆっくり善良に近づいてきます。
あと少しで2人は子狐のところへ来るでしょう。

よしよし。これでようやく子狐の、セルフ尻尾追いかけっこのエンドレスも終了です。
参拝客に遊んでもらおう、あわよくばお賽銭してもらって、ついでにおやつも頂こう。
コンコン子狐くるくるをやめて、参拝客を迎えに行こうとしましたが、
尻尾を追いかけ続け、くるくる回り過ぎて、それから本殿の階段を降りようとしたので、
目が回って、よろよろして、コロコロぽてん!
終わりなき尻尾チェイスな旅の果てに、階段から落っこちてしまいましたとさ。 おしまい。

5/31/2024, 4:06:26 AM