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食べたことある
モンシロが一番スッゴク美味しいと言ったら君は逃げた。
それが面白くて追いかけたら君は怒った。
花畑を駆け回るその歪な時間が楽しくて。

あれから二十年。
あの花畑は消えショッピングモールになった。
君と久しぶりにそこへ訪れると君は懐かしそうにもうここには花も虫もいないんだね、時代だねなんて哀愁にかられていた。

そこへ一匹のモンシロチョウが私達の前を横切った。やはり、ここは相変わらず私達の無垢な心を置き去りにはしてくれないと思った。
私は本当に食べようと、君に無邪気なあの頃を思い出してほしくて奇行に走ろうとしたが、君がそれを指先で止めて、本当に、愚かな人。と、笑った。

モンシロチョウが純真なものの象徴なのかは分からないけれど、君の笑顔を、その指先を見て、そのチョウの如く羽の生えた存在に見えて、照れてしまう。

モンシロチョウはそれを嘲笑うかの様にどこか遠くへ飛んでった

5/10/2024, 10:11:46 AM