作家志望の高校生

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朝。布団を隔てて、温かくもったりと俺を包む優しい空気と、冷たく鋭く俺を叩き起こさんとしてくる空気がアラームの音に振動する。
「ん゙ん……」
温かな空気から腕だけを伸ばしてアラームを止め布団にまた腕を仕舞う。あの一瞬だけで腕は冷え、布団の温もりが沁みた。
しかし、どう頑張っても朝は朝。起き上がって目覚めなくてはならない。温もりに足を絡め取られ、眠気が俺の腕を引いて布団に縫い付けてくるをのなんとか振り払って起き上がる。途端、冷たい部屋が俺の身を急速に冷やしていく。
寝起きでまだ身体も碌に働いていないせいで、体温は下がるばかりで上がらない。ガクガク震えながらストーブの元へ這い寄り、文明の利器に助けを求めた。
ストーブが部屋を暖める間に、軽く朝食を摂る。フローリングが冷たくて、でも靴下を履くのも面倒で、結局足の側面でよちよちと歩くことになる。それでも足先はどんどん冷えるのでどうしようもない。
顔を洗おうと洗面所に入って、水を出す。薄氷の張った洗面台から、ピキピキと甲高い音がした。水は空気よりずっと冷たく感じられて、俺はさっさと用事を済ませて愛しのストーブに温もりを求めた。
いつまでもこうしてグダグダしていたかったが、生憎今日は予定があるのだ。渋々ストーブの前から立って、体温で温んだパジャマを、クローゼットの中の冷えた私服に着替えていく。
身震いしながらどんどん着込んで、最後にぺたりとカイロを貼る。中の金属粉はまだ冷たいままだ。
先に開けておけばよかったと後悔しながら玄関に向かい、欠伸をしながら靴を履く。携帯の充電は、昨日寝落ちしたせいで中途半端な溜まり具合だ。
ドアを開けると、目の前がキラキラとグリッターでもかけたかのような輝きを放っていた。少し見惚れてしまう程綺麗だが、寒い。とてつもなく寒い。どうやら、キラキラと空気中で輝いているのは霜らしい。
首を竦め、ポケットに手を突っ込み、物理的に霜が降りる
中歩いていく。まだ季節は師走に差し掛かったところだ。
これから来る冬本番を憂鬱に思いながら、瞬きの度キラキラと動く、欠伸の涙が凍りついた睫毛を恨めしげに見つめていた。

テーマ:霜降る朝

11/29/2025, 7:39:42 AM