ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』の花束は哀しい。
1950年代のアメリカ。
知的障害を持つチャーリイは素直で親切な心の青年。友達たちのように賢くなりたかった彼は、知能を向上させる脳手術を受け、元は68だったIQを185まで上げることに成功する。天才だ。
でも、賢くなればなるほど、今まで知らなくてすんでいた辛い事実に気づいていく。友達だと思っていた仕事仲間は実は自分を嘲笑っていた。知能の低さゆえに自分は母から捨てられた。信頼していた教授たちにとって、自分はただの実験道具だった。
自分より先に脳手術を受けたハツカネズミのアルジャーノンは、向上させた知能をやがて失い、正気をなくして死んでいく。それを見たチャーリイは自分がこれからどうなっていくかを知る。
衰えゆく知能の中で、彼は報告書に書き記す。
「どうかついでがあったら、うらにわのアルジャーノンのおはかに花束をそなえてやってください」
アルジャーノンの運命に自身の運命を重ねて
アルジャーノンへの哀惜がそのまま自分自身を突き刺して
花束はまるで哀しみの結晶みたいだ。
憐れみ、哀しみ、鎮魂、今まで生を精一杯いき抜いた事への慰撫、その尊厳への祝福、はなむけ、、
華やかな分だけ、哀しみが滲む花束は切ない。
この文章書こうとして忘れていたあらすじを調べて改めて慟哭。。
映像化もいろいろされてるようで、強い力を持った本はいつになっても読み返されていくんだな。
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【55】花束
2/9/2024, 1:47:39 PM