いぶし銅

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枯葉

秋の終わりに水族館へ行った。
その日は雨が降っていたが、気分が良かったため、傘を刺さなかった。道中、しとしと降る雨に枯葉が打たれていた。想像と違う音を聞きながら、昂揚した気分を抑えつつ、水族館へ向かった。
薄らと濡れた服を拭きながら魚を見ていた。いや、水族館に限っては、展示された魚でなく、抽象化された雰囲気の中を歩いているのだ、そう思った。
館内である人に出会った。ヘルプマークと枯葉のキーホルダーが印象的なバッグに付いていた。彼女は耳が聞こえないそうだった。私は友人のために覚えた手話で彼女と対話した。
今日はなぜここへ来たの?雨が降っていたから。雨は好き?嫌いじゃないよ。
いつから耳が聞こえないのか質問した。生まれつきだと言う。私は彼女と、静かな空間にて、音の無い人生を考えてみた。私は瞼を閉じることができるため、目の見えない人の気持ちは何となくわかる。ただ、耳を塞いでも、私の心音は聞こえる。それが心地よかった。ただ、それは彼女には聞こえない。私は海月を見る彼女の肩を叩いた。
枯葉が雨に打たれる音を知ってる?

2/19/2026, 10:32:50 AM