NoName

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長く交際していた彼と別れてしまった。
彼は理由も何も言わず、

「別れて」

の一言のみ。
私は懸命に 別れたくない と伝えたが、彼は聞く耳を持たず足早にどこかへ去ってしまった。
なのにこの日に限って、私に引き止める勇気が全くなかった。焦りと置いてかれるという思いだけで、こうも人は変わるのか。

今までの日々はどこへ行ってしまったんだろう。
何を間違ったんだろう。もっとああすれば良かったのかな。
そう自問自答しても彼は帰ってこない。
今私に残っているのは、彼から貰ったペンダントと、悲しみと原因不明の後悔のみ。
数日経っても、彼からのペンダントを見つめるだけで泣いてしまう。
ふと、

「…彼の気持ちを尊重するなら…」

と思い、彼からの思いを全て手放した方が、彼も私も楽になるかもしれない。



彼との思い出の海に着いた。
この場所に立っているだけで、感情と身体が少し震えてしまう。
彼を思い出すからだろうか。
私はペンダントを握って砂浜を歩き、足先からはるか遠くまで広がる広大な海を見つめた。
少し躊躇ったが、思い出が全て蘇る前に、勢い良く思いを投げ沈めた。

「これで…いいの」

そう思った。海の底へ沈めて忘れ去ろう。
…なのにまだ涙が溢れ出る。どうして
どうしてまだ…

私の気持ちだけは、海の底へ沈めることができないほど大きくなってしまった。

1/20/2026, 1:21:15 PM