sippo

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恋物語なんて、フィクションだ。
小説や漫画の中にしか恋愛の幸せなんてない。
なのに、あの子はなんて晴れやかに幸せそうに笑っているんだろう。
真っ白なドレスを着て、色とりどりのブーケを持って。

昔から恋愛話─惚気でも相談でも─を聞かされるたびに、あぁわたしは違う種類の人間なんだと、やけに冷静に、でも確実に絶望してきた。
わたしは、恋愛ができない。

家族の好きと友達の好きと恋人の好き、何が違うのかよくわからない。
家族だってとっても大切な存在でしょう?
友達として、お互いを大切にしようねと誓い合うことだってできるはず。
好きに優劣なんてないはずだし、
わたしだって誰かの特別になれるはずなのに。

恋愛という世間一般に染み渡った常識的な枷が、わたしをひどくみじめにする。
どれだけ長い時間を共有しても、どれだけ気のおけない仲になっても、どれだけ好みが合っても、それが恋愛でないというだけでわたしは選ばれない。
(反対に言うと、わたしが選ぶこともできない。だって応えられないから。)

わたしはきっとこの先も、恋愛の呪いにかけられたまま、選ばれない孤独を感じながら生きていくのだろう。
いつかどこかで何かの拍子に、それでも良いと言ってくれる奇特なひとが現れない限りは。

5/19/2024, 7:28:02 AM