にわか雨だ。
先日、いつも通りに彼と帰宅していると、ポツポツと、
頭上に冷たい雨粒が降り始めた。
〔雨だ。今日降るって言ってなかったよね?〕
私は自身の通学鞄を頭上に持ち、彼に話しかける。
彼も同じ様な格好で、私の方に振り返り頷いた。
「夕立ちの心配も無いって言ってたのになー。
ていうかこれ、にわか雨じゃん。」
彼はそう言って空を見上げた。
私も釣られて見てみると、確かに晴れている。
なのに、徐々にアスファルトを湿らせる雨が降っている。
〔不思議だね。〕
そう呟くと、彼は
「何となく、昔聞いた話を思い出すなぁ。狐の嫁入りってやつ。その時に、狐が泣いて雨が降る…みたいな話。」
懐かしげに言った彼に私も、少し昔の事を思い出す。
そういえば、そんな昔話があった気がする。
〔空も泣いている、って感覚になるな。私は。
お狐様の気持ちに合わせて、みたいな?〕
彼は私の言葉に、
「あぁ、確かに。そんな感じなのかもね。
でも、嬉しくて泣いてるのかな。それとも、悲しくて?」
そう答えた。私は少し考えて、
〔分かんないや。もしかしたら、寂しいとかもあるかも。
お狐様も心境色々ありそうだしね。人間とかには計り知れない、何か。かもね。〕
曖昧な返事をすると、彼は意外にも頷いて、確かにね。
と言った。
まだポツポツと雨が降り続く中を、私と彼は話しながらにゆっくりと帰った。明日、風邪引かないと良いな。
9/16/2023, 2:04:26 PM