前略
さて、本日は何故このように貴方へ宛てて筆を執りましたのか、その訳をここにしたためてみようと思います。
私は昔より、自らの想いを言の葉に乗せることを不得手としておりました。
殊に、好意などというものは、どうにも上手く伝えられぬものでございます。語彙の乏しさもさることながら、何より、この想いを受け取った貴方が、どのように感じられるのか。それが恐ろしくてならなかったのです。
けれども、貴方と時を重ねるうち、拙いながらも、この胸の内を言葉にしたいと願うようになりました。
貴方はいつも、丁寧に想いを綴ってくださいますね。
その一つ一つに、私は心を弾ませ、まるで子供のように舞い上がってしまうのです。
それに引き換え、私はと言えば、言葉を紡ぎながらもなかなか差し出すことが出来ず、幾度も貴方をお待たせしてしまいました。申し訳なさと、不甲斐なさとで、胸がいっぱいになることもしばしばでございます。
しかしながら、貴方と一生を共にしたいと決めた身でありながら、想いを伝えられぬなど、何とも馬鹿げた話でございましょう。そう思い至り、せめて少しでも言葉に慣れようと、こうして筆を取った次第にございます。
このように書き連ねるうち、以前よりは幾分か、素直な気持ちをお届け出来ておりますでしょうか。
ほんの僅かでも前へ進めているのなら、これほど嬉しいことはございません。
けれども、近頃ふと気付いてしまったのです。私はどうやら、想いを伝えること以上に、人を励ますことの方が苦手なのではないかと。
これまで私は、人に励まされることこそ多くあれど、誰かを励ます側に立つことは、あまりございませんでした。いざ貴方を元気づけたいと願っても、どのような言葉を選べばよいのか分からず、ただ立ち尽くしてしまうばかり。
情けないことに、そのような自分に落ち込んでしまう始末です。まこと、馬鹿みたいでございますね。貴方を励ましたいはずの私が、先にしょげていては本末転倒だというのに。
無理に言葉を探すのも違うような気がして、けれど何も出来ぬのももどかしくて。結局のところ、貴方の傍らで、同じ時を過ごしながら、少しずつ学んでいくより他に術はないのでしょう。
斯様に長々と書き連ねておりますと、また話が逸れてしまいましたね。これもまた、私の悪い癖にございます。
近頃の貴方は、どこか心沈めておられるようにお見受けいたしました。ささやかでも、お力になれればと願っておりますが、今はただ、静かに寄り添わせていただきたく存じます。
それでは、またお逢い出来る日を心待ちにしております。
草々
3/22/2026, 1:12:16 PM